亀梨和也さん主演でドラマ化された小説です
『正 体』
★INDEX★
・書誌情報 ・町田主観のあらすじ ・個人的感想 |
■書誌情報
著者:染井為人 出版社:光文社 項数:624ページ(文庫本)
■あらすじ
一家3人を惨殺した少年死刑囚が脱獄し行方をくらまします。
少年は名前を偽り、整形などで外見を変えながら様々な場所を転々としていきます。
住み込みで働ける工事現場、リゾート地。
ある時は都会に現れたり、新興宗教に入信したり。
そこで出会う人々は何かしらの悩みや問題を抱えていたが、
彼と関わるうちに生き方や考え方を変えていきます。
しかし警察は彼を死に物狂いで探しているため、
居場所を突き止めて確保しようと何度もやってきます。
ギリギリのところでいつも逃げ切っていましたが、最後に働いた老人ホームで追い詰められ、
従業員一人を人質に取って立て籠もりを実行。そして彼の運命が決まることに・・。
■感想
読み始めるまでは、ただの脱獄犯の逃走劇かと思っていました。
しかし読後の感想を一言でまとめるなら「幸せになってほしかった・・」
少年が巡った5か所で出会った人々がそれぞれ抱える現代あるあるな問題。
少年は口数が少なく深いかかわりを作らないけれど、
そんな人たちを助けていく姿に「本当にこの人が犯人?」と疑問が生まれ、
彼の人情に惚れて感情移入してしまいます。
各所の5人も少年と交流するうちに「あれ、この人もしかしてあの脱獄犯では・・?」
と気づき始めるけど、それまでの彼の善良さに触れ、
警察から彼を守ろうとするところも心が温まります。
それぞれの場所で繰り広げられるストーリーは短編集のようでサクサク読みやすい!
だけどラストは、やるせない気持ちでいっぱいに・・。
本当に彼が犯人なのか、冤罪なのか。状況証拠って表裏一体ですね。
一点気になったのは、最後の展開がずいぶんと駆け足だったこと。
それまではとても丁寧に書かれていたのにずいぶんと浅く、淡々と結末を迎える。
作者が「気づいたら600ページ超えてる?!ラストはちゃちゃっとでいいか!」
くらいの感じなのでは。と思うくらいにあっさり(笑)
逆にさっぱりしていいのかな。
テキーラを飲んだ後にかじるライムくらいのサッパリ度です。